
明治29年の創業から百年以上、多くの芸術家や美術ファンに愛され続けるガクブチのヤマモトさん。お店に並ぶ額縁の販売はもとより、アーティストの依頼を受けて制作するオーダーメイドで、たくさんの名画を縁取ってきました。
今回は、至善堂で開催いたします「箔の日ワークショップ」で講師としてお招きするガクブチのヤマモト代表の山本さん(以下、山本さん)にインタビューをさせていただきました。知ると面白い額縁の歴史や、育まれる魅力、独自の価値観をワークショップに先駆けてお届けします。
額縁の歴史、そして役割とは?

そもそも「額縁」とはどのような歴史を持ち、どんな役割があるものなのでしょうか。
「ヨーロッパの宗教絵画や内装から飛び出し、備え付けの装飾から独立して持ち出せるようになったものが額縁だと思っています。」
山本さんはこれを「信じるものや大事なものとの境界線を作る一種の装置でもある」と語ります。
日本では明治以降、西洋文化の流入とともに応接間や猫足の家具などが好まれるようになったタイミングで額縁も変化を遂げました。
表具から派生した額縁や、金襴と刺繍を組み合わせたものなど多様なデザインへと発展してきたそうです。
アーティストの感性を形にする「ガクブチのヤマモト」のこだわり
最近のトレンドは極力目立たない額縁や、宙に浮いているように見せるデザインとのこと。しかし時代が変化して求められるものが変化しても、山本さんが大切にされていることがあります。
「額縁というのは引き立てるべきものをきちんと引き立てる仕事なんです。我を強く出しすぎない、これは気を付けています。」
私たちが簡単に使う「カッコいい」「シンプル」という言葉でも、人の価値観は千差万別。
「お客様の感性を引き出しながら、自分達の技術やエッセンスを混ぜて作り上げるのがこの仕事なんだろうなと、社員を見ていても感じます。」
ガクブチのヤマモトが得意とする額縁の特徴は3つあります。
- 塗装や箔をわざと傷つけたり焼いたりし、物理的にダメージを与えることでアンティークな風合いを出す仕上げ
- 無垢の木材の素地を生かした塗装と更紗や緞子布を嵌め込む技術
- 額縁のコピー制作も含め1点でも削りから仕上げる唯一無二の完全フルオーダーの制作
一見シンプルでありながら、どこか少し古びた落ち着きのある、木のゆらぎや角に柔らかさを感じる佇まい。山本さんがつくる額縁には、人の手が作り出す温かさがそこかしこに感じられます。

額縁と金箔の親和性
額縁にも、至善堂の箔が使われています。あえて箔を削ったりはがしたりする技法を用いることで、本物ならではの奥深いヴィンテージ感を演出しています。
山本さんは額縁における金箔の役割と価値について、こう表現しています。
「金はすべての国で通用する価値であり、豊かさの象徴として人に見てもらうために使用され続けてきたんじゃないでしょうか。」
額縁は境界線。金箔は中にある作品をさらに別次元に持ち上げ、際立たせることができる材料であると捉えられています。
「今は金の価格が高騰していますが、それはむしろ紛い物と本物の差をつけていくチャンスなのかもしれないですよね。」
今後の展望 「1%のマニアック」に深く刺さるニッチな手仕事を
「常に新しい素材や表現を追い求めていきたいです。」ネイルやファッション業界の技法から着想を得て試作することもある山本さん。工房の引き出しの中には買い込んだネイル製品が並んでいました。
「額縁業界の市場規模は年々縮小傾向にありますが、むしろマニアックでニッチなものを好きな人だけが知る世界になっても良いと思っているんです。知る人ぞ知る世界。マニアックを極めて、それが1%の人に刺されば十分じゃない?」
最後にこれから歩みたい道を尋ねました。
「みなさんが言う『シンプル』を究極まで突き詰めたら、額縁なんていらないことになっちゃう。だからこそ作品を包み込む人の手仕事、これを愛してくれる人に額縁を届け、伝えていきたいと思います。」
熱い思いから生まれる額縁たち。
芸術と共に、人と共に進む「ガクブチのヤマモト」の額縁には、時代が移ろっても愛され続ける懐の深さがありました。
8月7日「箔の日イベント」では、山本さんを講師にお迎えし、箔に触れ、額縁の奥深い世界を体験していただけるワークショップをご用意しています。山本さんの熱い額縁への想いとともに、自分だけの額縁への箔押しをぜひ体感してください。


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ガクブチのヤマモト
https://www.framing-y.com
箔の日ワークショップ「額縁をつくろう」
日時:2026年8月7日(金)13:30〜
参加費:8,900円(税込)
会場:堀金箔粉株式会社
お申し込み:堀金店頭 ・ 電話・至善堂・Google Formにて受付